2007年09月25日
High Dynamic Range Image
先日,モスクワの地下について調べていたら(なんでそんなこと調べていたのかは自分でもイマイチわからない)すごく幻想的な写真に遭遇し,CGによる修正かと思ったら…HDR(High Dynamic Range)という画像処理を施された無修正写真(デジタル画像処理されているので無修正という表現は間違いであるが,実際には存在しない被写体を人工的に描いたり,またはその逆をしていないので,本記事では無修正という言葉を用いる)であるということがわかった.ハイダイナミックレンジとかいうぐらいだから,何かのレンジを通常よりも広く持たせる画像処理だということは容易に想像できる.画像でレンジがどういういうとコントラストが容易に思い浮かぶが,HDRと名前がついているぐらいの画像処理…話はそう単純なものではない.ではそれがどういう技術なのかというと,露出の違う同じ被写体が写った複数のイメージデータから暗すぎ(明るすぎ)て潰れてしまう部分を相互に補って合成し,人間が実際に見る映像により近いイメージを作り出す技術なんだそうだ.私はこう見えても大学で画像処理関係の研究をしている(らしい)ので,そこらのホームページに載っているHDRIの解説を読めば大まか理解できたが,間違ったHDRI(HDR処理されたイメージ)を作って自己満足に浸っている人が沢山いる&実際に自分の五感でHDRの素晴らしさ体感したいので,実際にHDRIを作ってみることにした(単純!).
まずは露出の違う同じ被写体からなる写真を撮影する.どっかの自称"ロサンゼルスで働くウェブデザイナー"は一枚のイメージデータの明るさを変えて擬似的に露出の違うデータを複数枚作成し,HDR処理をする方法を紹介しているが…これは根本的に間違っており,必ず露出の違う同じ被写体からなる写真を撮影して用意しなければならないので騙されないように.また,露出を変えても大して変化のないデータを用意したところでHDRの効果は出辛いはず(理論からすると)なので,できるだけ輝度レンジの広い空間での撮影が好ましい(に違いない).ということで,松下電器のLUMIX FX-30っていうデジタルカメラで標準露出±2を1刻みで撮影したのが下の5枚の写真.ISOは100固定です.
ここまでくれは後は簡単.Photomatixという専用のソフトに上の5枚の写真を読み込ませ,Autoモードで合成してハイ出来上がり.
なんだか変わらないように思えますが,露出±0と比べるとHDRの効果は下に示すようにちゃんと出ているように思えます.
<露出-2とか-1の部分が使われている感じのところ>
・光源(スタンド)による光源周辺(キリンさんのお顔など)の白潰れが軽減されている.
・左側にあるディスプレイに映し出されている何かのウインドウ内の文字の白潰れが軽減されている.
<露出+2とか+1の部分が使われている感じのところ>
・ ニョキニョキ,コンピュータ,カエルさんスピーカーなどが見やすくなっている.
果たして上に記したHDR効果は本物なのでしょうか?露出±0,すなわち標準露出撮影のイメージデータの明るさやコントラストをレタッチソフトウェアでいじり,HDRIに近づけてみた結果が下の通りです.
大分近い絵にはなりましたが,コンピュータやカエルさんスピーカーなどの無理やり明るくした部分はノイズが激しく目立ち,左ディスプレイに映し出されている何かのウインドウ内と右ディスプレイの光源に近いフレーム部分は発色を良くしようとコントラストを上げすぎたせいで白抜けしている様子が見られます.私の腕がよくないのかもしれませんが,HDRIと同レベルの絵を補正処理のみで再現するのは極めて難しいと思われます.
結論として,作成したHDRIは十分な効果が発揮されているということがわかりました.表現力を高める技術であることはもちろん,安いデジタルカメラ(一眼レフとかに比べて)でノイズの少ない写真を撮影するのにも効果的ではないかと思います.ただし,動的被写体だとどうにもなりませんが…
因みに…今回使用した松下電器のLUMIX FX-30っていうデジタルカメラはオートブラケットという露出の違う写真を3枚連写で撮ってくれる機能があり,HDR用途には良いかもしれません.ただ,インテリジェントISO感度モード,通常撮影モード,かんたんモード,マクロモードでは逆光補正が自動でかかるらしく,露出を上げても自動的に露出が下がって撮影されます.他にシーンモードとして,人物,美肌,自分撮り,風景,スポーツ,夜景&人物,夜景,料理,パーティー,キャンドル,赤ちゃん1,赤ちゃん2,ペット,夕焼け,高感度,星空,ビーチ,雪,空撮,花火,水中といったやたら多い撮影プリセットがありますが,マニュアル撮影モードってもんはどこにもありません.とりあえず,シーンモードの夜景で撮影すると逆光補正はかからず,設定した露出で撮影されるみたいです.きっと他のLUMIXでも一緒でしょう.
投稿者 zeratinman : 2007年09月25日 06:23